02. 9月 2021

耐荷重能力に合わせて最適化: ゲレンデ用ウインチワイヤの活用

直径がボールペンほどの太さしかないのに、ゲレンデ用ウインチワイヤは斜面にある雪上車の全重量を支えることができます。ゲレンデ用ウインチワイヤは、Jakob Rope Systemsの豊富なワイヤロープのなかでも非常に強靭なワイヤです。特別な構造なので、このワイヤは最高の耐荷重能力を備え、動作も静かです。Jakobのワイヤロープ専門家コンスタンティン・キューナーとマルセル・マイアーにインタビューしました。

今日使われている雪上車はどのような仕事をするのですか?
コンスタンティン・キューナー:毎日、ゲレンデの営業が終わり、リフトが停止すると、雪上車の仕事が始まります。暗い中や氷点下での作業もよくあります。まず、ゲレンデを整備して新しくする作業から始まります。この作業は谷間から、スキー場で一番高いところになると、標高約3000mまで行われます。雪上車はほとんどどのゲレンデにも対応し、極度の急斜面でも作業できなければなりません。

ゲレンデ用ウインチワイヤは何に必要ですか?
コンスタンティン・キューナー:ゲレンデ用ウインチワイヤは急斜面での雪上車の安全に役立ちます。安全性を確保することによって、車両がワイヤにぶら下がりながらスキー場の斜面の整備を行えるようになります。運転手にとっては、ワイヤができるだけ気にならないことが重要です。安全性は必要ですが、できるだけ自由に動けなければなりません。ワイヤは重すぎたり、弾性がありすぎたりしてはいけません。地面に引っかかってもいけません。こうしたことはすべて雪上車の走行に支障をきたしてしまうのです。

マルセル・マイアー:以前とは違い、今日ではゲレンデ用ウインチワイヤと巻き上げ機を使って下から上へとゲレンデの整備を行います。巻き上げ機のサポートにより、雪上車のクローラーが雪をあまり引っかかなくなるので、ゲレンデの質が大幅に向上するのです。しかも、雪上車が走り上がっていく際に雪が斜面にプレスされます。日中にスキー客が下方に運んだ雪を上に持っていく作業も、ワイヤと巻き上げ機を使ってやり遂げることができます。それによって、ゲレンデのむき出しになった箇所が翌日には再び申し分のない状態でスキーをできるようになります。

つまり、ゲレンデ用ウインチワイヤはたくさんの仕事をこなさないといけないんですね。
コンスタンティン・キューナー:ゲレンデ用ウインチワイヤは頑丈な最高仕様のワイヤロープで、可能なかぎりメンテナンスが少なくて済み、安全に機能し、しかも非常に長いものとして使えます。雪上車の巻き上げ機には約1050mのワイヤがおさまります。この長いワイヤがドラムに巻かれるので、ワイヤは、こうした負荷に耐えられなければなりません。そのため、ワイヤは極めて高い耐摩耗性を備えている必要があります。ゲレンデの使用時には、かき傷や圧搾を受けたり、曲がったりします。つまり、直径ができるかぎり小さいワイヤで、最高の破断荷重と横復原力が求められます。ワイヤが安定すればするほど、雪上車はより傾斜のある所をより速く走行できます。そして雪上車はいっそう重量があり、幅広でも構わなくなるのです。

ゲレンデ用ウインチワイヤと他の巻き上げロープの違いはどこにありますか?
コンスタンティン・キューナー:ゲレンデ用ウインチワイヤは特別な構造になっています。ワイヤ内部のストランドとスチールは二重に平行になっています。これにより、非常に高い密度になり、ワイヤの力の分布が最適化されます。この特別な構造のおかげで、ワイヤは非常に安定し、破断荷重も大きくなっています。密度の高い構造になっているので、ワイヤの外側は他のロープに比べてなめらかです。その結果、巻き上げ機ではしなやかに動作します。ボールペンを思い浮かべてみてください。ゲレンデ用ウインチワイヤも同じくらいの太さ、10~11mmです。そのワイヤに雪上車全体がぶら下がり、急斜面に沿って800m下まで降ろされます。つまり、すべてが耐荷重能力に合わせて最適化されていなければなりません。

Jakob Rope Systemsでは、どのゲレンデ用ウインチワイヤを取り扱っていますか?
マルセル・マイアー:当社では3種類のゲレンデ用ウインチワイヤを提供しています。すべて、Kässbohrer社とPrinoth社の車両の追加装備用です。直径11mmで9本のストランドでできている特殊ワイヤ、Winch King 9は、Kässbohrer社車両の巻き上げ機向けに最適化されています。直径10mmまたは11mmで8本のストランドでできているWinch Power 8は、Prinoth社車両のドラムウインチに使用します。

ゲレンデ用ウインチワイヤはこの数年間で変わりましたか?どのような傾向が目立っていますか?
マルセル・マイアー:メーカー各社はワイヤの破壊強度をさらに向上させるために工夫を凝らしています。それが間違いなく最近の傾向ですね。ドイツにある提携企業では、目下、ゲレンデ用ウインチワイヤにプラスチック製のシムを使う技術を開発中です。それによって、ワイヤが最適に満たされます。伸びが少なくなり、ワイヤが横方向の圧力にもっと耐えられるようになり、ストランド間の柔らかいプラスチック製の敷物によってワイヤ内で圧力がはるかに適切に分布するようになります。

ワイヤが高品質であることを顧客はどこで見抜きますか?
マルセル・マイアー:製品の品質は、新しいワイヤを使って稼働させて最初の数時間でわかります。ワイヤが安定して、伸びも変形もないか?もしそうなら、品質は大丈夫です。ゲレンデ用ウインチワイヤは非常にハードな使われ方をします。品質に関して、寿命がどのくらいの時間になるか、良し悪しを言うのは難しいです。雪上車、ゲレンデ、障害物、視界、斜面で起きるすべてのことがワイヤの寿命に大きな影響を及ぼします。

ゲレンデ用ウインチワイヤの寿命を伸ばすための何かよい手入れの方法はありますか?
マルセル・マイアー:目視点検でワイヤの破損が散見される場合は、ワイヤを抜き取ってもかまいません。そうでないと金属片がドラムで他のワイヤを切り離してしまいます。ある一定の運転時間の後で、ワイヤをすべて取り外して、後ろの端の部分を切り取ってから、再び巻き付けることができます。これによって、雪上車のドラムでワイヤを巻き付けたり、降ろしたりするときにいつも同じ位置になっている層の変更点をずらすことができます。

ゲレンデ用ウインチワイヤに関して、Jakobではそのほかにもサービスを提供していますか?
マルセル・マイアー:当社では、ワイヤの全寿命にわたって、顧客のサポートを行います。購入、使用、そして既存のワイヤの状態や損傷に関するすべての質問についてご相談に乗ります。そのために顧客からはいつでも写真や材料そのものを送ることもできます。当社では工場で調査し、フィードバックを与えます。ご要望がある場合は、ゲレンデ用ウインチワイヤの使用に関するトレーニングも提供しています。

現在、ゲレンデ用ウインチワイヤの在庫はどんな状況ですか?
マルセル・マイアー:当社では、顧客に来季の冬シーズンのためにワイヤが十分に用意されているか早い段階でチェックするようお勧めしています。Jakobは3種類のワイヤロープがすべて在庫にあり、パートナー企業に十分補充できるようになっています。当社の拠点からドイツ、オーストリア、スイスのスキー場まで迅速に送り届けています。また、現在の冬シーズンに関しても、納期を短くするよう努力しています。緊急事態に多くのスキー場にすぐに届けられるようになっているのです。

(発行:SI Magazin Schweiz Spezial 2021)